• 公開日: 2017/9/30
  • 更新日: 2018/12/13

学生の私が、終末期の患者さんに対してできたこと

テーマ:患者さんから言われて印象的だった言葉と、そこから学んだこと

天使にはなれなくても

tenshi

実習で受け持たせていただいたのは…

看護実習で受け持たせて頂いた患者さんは、消化器系の癌を患っていました。
本人には未告知だったため、体調の悪さに漠然と不安を持っていらっしゃる方でした。
一見気難しそうに見える患者さんでしたが、オペ後の歩行訓練に同行する中で少しづついろんな話をして下さる様になりました。

患者さんの優しい言葉

幼少期に父を戦争で亡くし寡婦となった母と必死で生きてきたこと。
自身の娘さんの結婚式を無事に終えたので孫の誕生を心待ちにしていることなど、だからこそ元気になって退院したいとのことでした。
お話を伺いながら、治る見込みはなく、緩和ケアに移行している最中であることを本人が知らない現実。その患者さんと実習生として向き合う辛さに、内心苦しく感じていました。
そして実習最終日、体調不良で午前中休んで午後からようやく実習先の反省会に参加した時のこと。
実習教員から聞いた言葉に涙がとまりませんでした。
「学生さんが体調を崩したのは私の看護で疲れさせてしまったからではないですか。彼女には母親の様にあたたかい母性愛が溢れています。私のことを受けとめてくれて、無理をさせたんじゃないでしょうか。」
患者さんに気を遣わせてしまったことに益々落ち込みましたが、反省会を終えた後、最後のご挨拶に病室に伺いました。
その時患者さんから、「これからもあたたかい心で患者さんを包んであげてほしい、穏やかな気持ちをありがとう。」と言っていただきました。

何もできないと思っていたけれど

いずれ亡くなってゆく患者さんに対して私は何もできないと思っていたのですが、患者さんにとっては意味のある関わりができたということを教えていただきました。
看護は 受容と共感と言われますが、簡単ではないと思います。
理想論かもしれませんが、相手を受け入れ受けとめる気持ちを常に心がけていこうと誓った出来事になりました。

●執筆●あすなろ さん

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