コラム
  • 公開日: 2016/8/3
  • 更新日: 2018/12/13

【連載】世界の医療の話

「見せる義足」がハンディキャップを個性に変える

「少しずつ、バリアフリーという概念が定着しつつある日本ですが、まだまだ障害に対する理解が浅いように感じます。

特に義足の装着は、パラリンピック等のアスリートたちの活躍で認知されるようになってきたものの、ファッションや日常生活での受け入れは乏しく、パンツで隠し生活をしているという方が多くいるのが現状です。

そんな中、義足をファッションの世界から盛り上げていこうという動きが注目されています。


義足もファッションとなる

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ビースポーク・フェアリングスというアイテムをご存知でしょうか。2013年インデックス・アワードの最終選考まで残ったこのビースポーク・フェアリングスとは、3Dスキャナーを用いて解剖学的に設計されたスタイリッシュな義足カバーのことです。

個人的な好みやスタイルを反映することができ、デザインをインターネット上で好みのデザインを選ぶか、製作者と一緒にデザインをしていくこともできます。

そもそも、個々の体格や障害度、体力に合わせるためにオーダーメイドで作られる義足は、熟練したノウハウとコストを要しました。当然、義足カバーも同様です。

しかしながらこのプロダクトのように、3Dスキャナーなどのテクノロジーは、製作のコストや時間の低減を可能にし、より手軽に、自由に、「自分らしさ」を表現できる大きな手助けになったといえます。

image2 また日本でも、スキナージというシリコン製の義足用カバーが出回っています。このカバーを義足の上からタイツを履くようなイメージで装着することで、四方八方どこから見ても義足に見えないような質感を演出することができるようになりました。

スカートやひざ下を出すパンツスタイルなども心置きなく楽しめるようになり、義足のファッションの幅が一気に広がりをみせています。

これらの技術によって義足は衣服で隠すものから、衣服をまとった上でさらけ出していくという方向に進化しています。

障害 = 個性という概念を義足にも

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現在、障害=個性という考え方が少しずつ日本でも広まりつつあります。 今までは、周囲に義足であるという事実をどれだけ気づかせず、実際の足と同じような質感に見せるかというのが義足を作る上での方向性でした。

image4 しかし、今では義足のファッションショーなども開かれ、見ていて美しい義足が増えてきました。

このことから、義足は一種の個性として魅せていくという方向性に進化しています。

2020年、日本でオリンピック、パラリンピックの開催が決定している今だからこそ、障害を個性として受け入れ、障害を持っている人にも幅広い選択肢を与えられるような社会となっていくこと、さらには医療者がその意思決定のプロセスに関われる。そんな時代となっていくことを期待しています。

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●執筆●Medicatessen編集ライター  
Ray
動物・スポーツ・食べることが大好きな、現役看護師。

記事提供:Medicatessen)

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